設立趣意書


 近年、「成果主義」という言葉が頻繁に新聞の紙面に登場するようになって来ました。それとともにより一段と「スキルアップ」や生き残りをかけた「競争」が煽られるようになって来ました。他方、「中流意識」を持った人々の数も急減してきています。また中高年だけでなく、若者の仕事や将来にも「希望」という言葉の精彩が失われ、その「格差」の拡大は進んでいます。努力すれば報われる」という将来への希望を抱ける時代から、次第に「努力をしても無駄だ」という諦めの気持ちが支配する時代になってきました。その結果あらゆる所で少数の「持てる者」(「勝ち組」)と多数の「持たざる者」(「負け組」)とに二極化が進んでいます。特に雇用のあり方については、正社員を減らし、派遣労働やパート労働による代替や仕事の請負などの雇用の不安定化が進み、労働基準法違反で書類送検される企業もあるなど職場における仕事のゆとりも急速に失われています。人がこの世に生れ、教育を受け、就業し、家庭を持ち、老後に至るまで、結果としての「自己責任」が問われ、従来では考えられないような犯罪の多発、凶悪、低年齢化や中高年を中心にした自殺など、うすら寒い世の中の到来を実感せざるを得ません。

 

 老若男女を問わず多数の勤労者や市民にとって、日々の仕事や健康、医療、介護などの福祉や年金をはじめとした社会保障制度など将来への不安が増大しています。何よりもこれまでの人間関係やコミュニケーションは薄れがちになり、地域や職場社会の共同体的な関係も脆弱になり、その包容力を失いかけています。信頼して何でも相談できる人間関係や寄る辺を持たない人々が次第に増えているのも事実です。インターネットやマスコミを利用することで困り事相談のできる場所や情報の検索は格段に広がりましたが、逆にそれだけ個々人の孤独を深めているとも言えます。国や地方の行政機関の敷居は高いし、縦割り行政のために親身になった問題の解決には、ほど遠いのが現実です。また労働・社会保険や福祉など現行の頼るべき社会保障制度(セーフティー・ネット)は先細るばかりです。

 

 このような時代にあって、ふつうの勤労者や市民が自立し、将来に希望を持って生きるためには、公的機関に頼りきりの「公助」や何でも「自己責任」に帰してしまう「自助」とは異なる「共助」をキーワードにしたコミュニティーが必要です。人と人との関係を織りなす縁を取り持つ場であり、その中継地点とネットワークを築くことが大切だと思います。

 

 このように仕事や生活をする人々をとりまく環境が大きく変化し、これに伴って多様な問題が表面化してきておりますが、これに応じ、近年、問題解決の手段も多様化してきております。こうした状況において、問題解決を必要とする人々は、何が適切な解決手段となるかを選択する必要に迫られることになりますが、これに対する適切な助言、知識が要請されるのではないでしょうか。ここに、問題解決という需要と適切な解決手段の提供を媒介する者が必要とされる理由があります。ただ、このような需要と供給を媒介する者は、ひとつの分野に精通しているだけでは、十分な対応はできません。多様な知識を総合的、有機的に結びつけ、真に問題の解決に有効な手立てを提供することが要求されます。

 

 また、多様な問題を解決するには、多方面の専門家や実務経験者が、問題解決を必要とする人々とともに、共助の視点に立って、考え、検討し、解決の糸口を探っていく活動をしていかなければなりません。このような活動は、専門的な知識や経験も必要ですが、問題解決を必要とする人々の知識経験もまた必要であり、双方が相補いあって問題の解決に向かって活動しなければなりません。このような共助の視点に立った活動は、一方が何らかのサービスを提供し、これを享受した他方がその対価を払うという関係では成り立ちません。

 

 そこで、私達は、多様な専門分野の知識や経験を持った人たちを統合して、これを解決すべき問題を抱える人達に提供して行くものとして、非営利でありなおかつ民間の立場で設立される会社貢献事業つまりNPOという組織を設立することにその社会的意義を見出したのです。ただし、私たちは、一方的に問題解決手段を提供するのではなく、あくまでも「共助」の思想に立ち、問題を抱えている人も、問題を助力する人も共に考え、行動し、より良い解決を目指す方向で関わって行きたいと思います。

 

 これら労働上の問題は、同時に個々勤労者とその家族にとっては、年金、医療、介護をはじめとした社会保障や税金問題や、教育問題など具体的な生活上、当然の問題として浮上してきます。そのような事態も勤労者や市民の生活場面として想定し、NPOに関わる人たちの相互のネットワークの活動の広がりに繋げて行こうと思います。

 

 従って、私たちは、このような活動を通じて、お互いの自立と助け合いの新しい都市型のネットワーク社会を目指したいと思います。そして、人間として生きていくための自信と誇りを回復し、未来に希望を持って人生を送り、お互いが手を携えて生きて行くことができることを願っています。

 

    2005年7月2日